統合失調症について

どんな病気?

 2018/4/15 

統合失調症は、精神機能のネットワークがうまく働かなくなって生じる、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患です。私たちは、喜びや悲しみ、楽しみといった感情を持ち、常に思考して生きています。こうした感情や思考は、脳内の精神機能のネットワークを使って行われています。その精神機能のネットワークが、何らかの原因で様々な情報や刺激に過敏になりすぎてしまうと、脳が対応出来なくなり、精神機能のネットワークがうまく働かなくなることがあります。その結果、感情や思考をまとめることができなくなり、様々な精神症状が出現する状態になります。こうした脳内の統合する機能が失調している状態を『統合失調症』と言います。 精神機能のネットワークは、脳内の様々な部位で行われており、その不調の部位によって、幻聴が聞こえたり、幻視が見えたり、『周囲で自分の悪口が言われている』と思い込むなどといった、被害妄想が生じるなど様々な症状が出現します。統合失調症では、幻覚や妄想などの『陽性症状』、意欲低下などの『陰性症状』、物事に対して臨機応変に対応しにくくなる『認知機能障害』があります。

1.患者さんの数

統合失調症の発症には、国や地域、民族による差はほとんど見られません。以前は、男女差はないと言われていましたが、最近の報告では男:女=1.4:1で男性に多いと言われています。有病率は、0.7〜1%で約100人に1人の割合ですので、決して珍しい病気ではありません。 有病率1%から推測すると、日本には約100万人の患者さんがいると推定されます。しかし厚生労働省の患者調査によると、統合失調症の患者さんの数は77万人とされています。恐らくこれは統合失調症を発症しているけども受診していなかったり、病気を周りの人に隠している(または家族によって隠されている)人が多いためと考えられます。

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好発年齢は、思春期から30歳までで、統合失調症の人の70〜80%を占めます。平均の発症年齢は、男性が27歳、女性が30歳で、男性の方が、発症年齢が低い傾向があります。女性では40〜45歳に2度目の発症の小さなピークがあり、この時期の発病は男性の2倍となっています。

2.発症の原因ときっかけ

統合失調症の原因は、現在のところ明らかになっていません。遺伝の影響を調査した研究も過去に多く行われましたが、遺伝のみでは説明できないことが判明しています。発症の原因が明白でない現在、ストレス脆弱性モデルという考え方が提唱され、生まれながらもつストレスに対するもろさ、神経の過敏さ、遺伝的・生物学的要因をもつ人に、社会的な要因(ストレス)が加わり、神経伝達物質のバランスが崩れることで統合失調症を発症すると考えられています。 従って、進学・就職・独立・結婚などの人生の進路における変化が発症の契機となることが多いです。ただ、それらは発症のきっかけではありますが、原因ではないと考えられています。その理由としては、こうした人生の転機は誰でも経験するようなことであり、大部分の人は発症に至らないことが挙げられます。 しかしながら、イジメやパワハラ、過酷な労働環境、険悪な夫婦関係などによって発症することが多く、ストレスがきっかけの一因になると考えられています。

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3.素因と環境

一卵性双生児は、遺伝的には同じ素因を持っていますが、2人とも統合失調症を発症する確率は約50%とされています。遺伝の影響はあるものの、遺伝だけでは決まらないと言われています。現在の研究結果では、統合失調症の原因遺伝子は見つかっておらず、統合失調症の原因には素因と環境の両方が関係しており、素因の影響が3分の2、環境の影響が3分の1と言われています。 子供は、親から遺伝と環境の両方の影響を受けますが、それでも統合失調症の母親から生まれた子供のうち、同じ病気を発症するのは10%と言われています。

4.統合失調症の歴史

統合失調症は、以前は精神分裂病と呼ばれていました。もともと海外では、19世紀から20世紀にかけて『Schizophrenia』と名前がついていて、同時期に日本では、『精神分裂病』と訳語が当てられました。そうして『Schizophrenia』は、1900年頃から2002年の間、『精神分裂病』と呼ばれていました。

日本では、1993年に、全国精神障害者家族連合会から、日本精神神経学会に対して『精神が分裂する病気』というのは、あまりに人格否定的であって本人にも告知しにくい、名称を変更して欲しい、という要望がありました。その後、『精神分裂病』という病名自体が当事者の社会参加を阻んでいる可能性があると指摘され、その侵襲性と病名変更の必要性が議論されるようになりました。

名称変更の主な理由としては、以下の3点が挙げられます。

1 呼称が持つ人格否定的な響きとその古い疾患概念のために、「精神分裂病」と診断されたことで患者の自尊心が傷つき、回復者の受け入れを社会が逡巡してきたこともあり、ノーマライゼーションを基本原則とする医療とケアにとって侵襲的である「精神分裂病」という呼称を変更して、治療意欲が高まるような新しい呼称と疾病概念を必要としたこと。

2 近年の精神医学の進歩によって精神分裂病の疾患概念がかなり変わったこと。今までは、精神分裂病とは人格荒廃に至る重症、予後不良の疾患であるという古い疾患概念がありました。しかし、1952年に世界で初めて抗精神病薬(クロルプロマジン)が開発され薬物療法の時代の幕開けとなりました。その後も定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬として様々な薬剤が開発され、処方できるようになりました。その結果、精神分裂病の患者さんにおいて長期予後でも過半数が回復し、完全かつ長期にわたる回復を期待できるようになりました。そして現在、精神分裂病とは人格荒廃に至る重症、予後不良の疾患であるという古い疾患概念が大きく変わることとなりました。

3 『精神分裂病』から『統合失調症』に変更することで、最新の疾病概念を普及させ、一般市民だけでなく医療従事者の間でさえみられる誤解や古い疾患概念を払拭し、病名告知で始まる新しい包括医療を展開しなければならない。

現在は、『分裂病』という病名は用いません。『統合失調症』という病名に置き換わり、治療法も『分裂病』の時代よりも格段に進歩しています。 ですが、未だに分裂病時代の偏見や差別は、完全に払拭出来たと言えないのが現状です。

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