統合失調症について

どんな症状?

 2018/4/15 

統合失調症の症状は多彩であり、全体を理解するのは困難ですが、主に下記の3つの症状に分けて考えられます。

(1)陽性症状 :幻覚・妄想、自我意識の障害など

(2)陰性症状 :生活の障害、認知機能障害、思考障害、行動障害など

(3)病識の障害:自分の病気について正しく認識できない

(1)陽性症状

陽性症状は、幻覚や妄想といった本来あるはずのないものが現れる症状です。統合失調症の代表的な症状です。幻覚や妄想は統合失調症だけでなく、他の疾患でも見られますが、統合失調症の幻覚や妄想には一定の特徴があります。

① 幻覚

幻覚とは、実際にはないものをあるように感じることです。視覚や聴覚、嗅覚、触覚など様々な感覚で現れます。統合失調症で最も多いのは、聴覚についての幻覚、すなわち幻聴です。統合失調症では、『お前は馬鹿だ』、『お前は価値のない人間だ』などと本人を批判・批評する内容や『あっちへ行け』、『〇〇しろ』と命令する内容、『今トイレに入った』、『お風呂に入っている』と本人を監視しているような内容が特徴的です。テレパシーや電波などの形で感じることもあります。普通の声のように、耳に聞こえて実際の声と区別出来ないことがあったり、直接頭の中に聞こえる感じで、声そのものよりも、不思議と内容ばかりがはっきりとわかる場合などがあります。

周りの人からは、幻聴に聞き入ってニヤニヤ笑ったり(空笑)、幻聴との対話でブツブツ言ったりする(独語)ため、奇妙だと思われ、その苦しさを理解してもらいにくいことがあります。

また、他の人に見えないものが見える幻視、普通なら感じないような身体の症状を感じる体感幻覚、臭わないはずの臭いがする幻嗅、味覚がおかしくなる幻味などを生じることがあります。

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② 妄想

妄想とは、非現実的なことやあり得ないことなどを信じ込むことです。妄想には様々な種類があります。

  • 迫害妄想:『すれ違う人が、自分を襲おうとしている』
  • 関係妄想:『近所の人の咳払いは、自分への警告だ』
  • 注察妄想:『道を歩くと、皆がチラチラと自分を見る』
  • 追跡妄想:『暴力団や警察が、自分を尾行している』

これらの妄想を総称して、被害妄想と呼びます。

上記以外でも、下記の症状を認めることがあります。

  • 誇大妄想:『自分には世界を動かす力がある』、『自分んは偉人の子孫だ』
  • 考想化声:『考えていることが声となって聞こえてくる』
  • 作為体験:『自分の意思に反して、誰かに考えや体を操られてしまう』
  • 構想伝播:『自分の考えが、世界中に知れ渡っている』

思考や行動について、自分が行っているという感覚が損なわれてしまうことが、こうした症状の背景にあると考えられているため、自我障害と総称されています。

③ 自我意識の障害

自分と、外の世界との境界がはっきりしなくなって、周囲の影響を受けやすくなり、自分の行動や考えを誰かに支配されているように感じるようになります。自分の考えが他人に知られてしまうと感じる構想伝播(思考伝播)、人に考えや衝動を吹き込まれていると感じる思考吹入、考えを他人に吸い取られてしまうと感じる思考奪取などの『させられ思考』や、実際に誰かに操られていると感じる『させられ体験』があります。

(2)陰性症状

統合失調症では、幻覚・妄想とともに、生活に障害が出ることが特徴です。『日常生活や社会生活において適切な会話や行動・作業が出来にくい』といった形で認められます。幻覚や妄想に比べて、病気による症状とはわかりにくい症状です。

① 思考の障害(まとまりのない会話や行動になる)

考えにまとまりがなくなり、1つの話題から全く別の関連性のない話題へ話しが飛んだり、つじつまが合わないことを言ったりします。ひどくなると会話が支離滅裂になり、周囲の人は理解できなくなります。考えが急に中断されて、突然何も言葉が出てこなくなることもあります。

② 感情の障害

自分の感情についてと、他人の感情の理解についての両者に障害が生じます。自分の感情についての障害とは、感情の動きが少ない、物事に適切な感情がわきにくい、感情を適切に表せずに表情が乏しく硬い、それなのに不安や緊張が強く、慣れにくいなどの症状です。

他人の感情や表情についての理解が苦手になり、相手の気持ちに気づかなかったり、誤解したりすることが増えます。こうした感情の障害のために、対人関係において自分を理解してもらったり、相手の気持ちと交流をもったりすることが苦手となります。

③ 意欲の障害

物事を行うために必要な意欲が障害されます。勉強や仕事をしようとする意欲が出ずに、ゴロゴロばかりしてしまう(無為)、部屋が汚くても整理整頓出来ない、入浴や洗面などの身辺の清潔にも気を遣わない、という症状が認められます。

基本的な意欲の障害として、他人と交流をもとうとする意欲、会話をしようとする意欲が乏しくなり、無口で閉じこもった生活となる場合もあります(自閉)。

④ 行動の異常(極度に興奮したり、奇妙な行動になる)

激しく興奮して大声で叫んだり、逆に周囲からの刺激に全く反応しなくなったりします。目的のない運動や無意味な言葉を繰り返す常同症や、芝居じみた挨拶や奇妙な身振りをする衒奇症(げんきしょう)、最初にとらされた姿勢をそのまま保ち続けようとするカタレプシーが見られる事もあります。

⑤ 認知機能障害

認知機能とは、記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの知的な能力を指します。統合失調症では、これらの認知機能に障害が見られ、生活・社会活動全般に支障をきたします。

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・選択的注意の低下

周囲の様々な情報や刺激に対して、取るに足らないものを無視して必要なものだけに注意を集中することが出来ません。例えば、会話中に周囲の動きや物音などにとらわれて、落ち着きがなくなるなどの行動が見られます。

・比較照合の低下

過去の記憶と比較して判断できない。また細かなことにこだわって全体を把握出来なかったり、言葉に隠された意味や比喩などを、理解することが出来ないことがあります。

・概念形成の低下

物事をグループ化して概念化出来ない。様々な情報に対して、類似点と相違点を区別して物事をグループに分けて概念化する機能が低下しています。そのため、過去の類似の体験に基づいての対応が出来ません。例えば、箱は積み上げ、衣類はタンスにしまう、といった整理整頓が出来なかったり、手順良く料理ができないなどの不具合が生じます。

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(3)病識の障害

病識とは、自分自身が病気であること、あるいは幻覚や妄想のような症状が、病気による症状であることに自分で気づくことが出来ること、認識できることを言います。統合失調症の場合には、この病識が障害されます。多くの場合、普段の調子とは異なること、神経が過敏になっていることは自覚出来ますが、統合失調症により幻覚や妄想が活発な時期には、それが病気の症状であると言われても、なかなかそう思えず、自分が病気であることが認識できない場合があります。そのため、統合失調症を発症しても、『自分は正常である』と思って『どうして自分に治療が必要なのか』わからず、抗精神病薬の内服を拒否したり、病院を受診することに激しく抵抗したりすることがあります。

しかし治療が進んで病状が改善すると、自分の症状について認識できる部分が増えていきます。

【急性期統合失調症の症状と問題行動】

統合失調症の急性期では、精神興奮、易刺激性、不安・焦燥感、緊張症状など一過性の精神症状が出現することがあります。また、問題行動については、運動興奮、自傷行為、自殺企図などがあります。

急性期統合失調症では、精神症状が激しく、患者さん本人の病識もないことがほとんどですので、速やかに精神科を受診するようにしてください。家族だけで対応が困難な場合は、地域の保健師や保健福祉センターなどに相談してください。また、暴力や危険行為、自傷行為などを認めたら、躊躇することなくすぐに警察に連絡し協力を仰いでください。まずは患者さんと御家族の安全が第一です。

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【統合失調症の経過】

統合失調症は、病気の経過により大きく4期に分けられます。

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引用:(財)全国精神障害者家族会連合会:統合失調症を知る心理教育テキスト当事者版, P5~36, あせらず・のんびり・ゆっくりと, 2004 (一部改変)

① 前兆期

  • イライラ感、焦燥感、怒りっぽくなる
  • 不眠(眠れない、夜中に目が覚める、眠りが浅い、熟睡感がない)
  • 聴覚過敏や光刺激に過敏になる
  • 気持ちの変わりやすさ
  • 忘れっぽくなり、作業や仕事の効率が低下です
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幻覚や妄想、興奮などの陽性症状は、突然生じたように見えますが、ほとんどの場合、精神状態が悪化する前に何らかの変化が現れます。家族や友人など周囲の人がその徴候(サイン)に気づくことが重要です。最も重要な徴候(サイン)は、睡眠の変化(特に不眠)です。不眠や脳の神経が休むことが出来ない状態で非常に危険な状態です。ストレスや精神状態の悪化によって不眠が生じ、また不眠によってストレスや精神状態の悪化が一段と進み、負の連鎖になります。

② 急性期

  • 幻覚(幻聴・幻視など)、妄想
  • 疑い深さ
  • 睡眠障害
  • 聴覚過敏、光刺激に過敏になる
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急性期には、様々な症状が現れます。患者さんの人格や性格(時には性別)が変わったようになり、戸惑いを覚える人も少なくありません。急性期には、主に幻聴や妄想に悩まされます。『自分の行動が監視されている』、『誰かに命を狙われている』、『電波で攻撃される』といった、通常ではあり得ないと思われることばかりですが、患者本人はそれが真実だと思い込んでいます。そのため、家族がいくら説得しても、それが誤りだと納得させることは出来ません。時間が無駄になるだけでなく、患者さん本人の不安や恐怖を増幅させてしまうので、論理的な説得はせず、患者さんの気持ちを理解するようにしてあげることが大切です。『不安だろうけど、ここにいれば絶対に大丈夫』、『あなたのことは私が守る』と共感を示す接し方が重要です。繰り返しますが、説得や修正は逆効果だと言うことを覚えていてください。

③ 消耗期(休息期)

  • 過度の眠気
  • 倦怠感
  • 自閉(引きこもり)
  • 抑うつ:無気力感、無関心となる
  • 過度の甘え(小さな子供のような振る舞いをする)
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消耗期は、患者さんはぼんやりしたり、寝てばかりの状態になります。急性期に生じた精神症状などによりエネルギーが失われたためと考えられています。この時期は、その失われたエネルギーを回復するための充電期間と言えます。患者さんはよく眠り、小さな子供のようなふるまい(退行)もしばしば見られます。睡眠は神経を休め、回復を促すために必要です。トータルの睡眠時間も重要ですが、夜間に眠れているかは非常に重要です。夜間に眠れていない場合は、医師に相談し、薬の使い方や生活リズムの整え方について相談してみましょう。

この状態はずっと続くものではなく、エネルギーが回復すれば、少しずつ状態は変わり、回復期に移行します。

④ 回復期

  • ゆとり感の増大
  • 周囲への関心の増加

やりたいことから少しずつ行動範囲が広がります。

社旗復帰に向けて意欲が出てくると同時に焦りを生じるようになります。

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消耗期にゆっくり休むことが出来れば、何かを進んでやるためのエネルギーが生まれてきます。この時期を回復期と呼びます。一見、変わらないように見えても、患者さん自身がゆとりを感じることが出来るようになります。それが回復のサインと考えられます。この時期は、患者さんの行動範囲は少しずつ広がってくるので、自分の好きなことや、負担の少ないことから始めてみると、無理なく取り組むことが出来るようになります。

家族としては、『頑張って家事や仕事をして欲しい』、『早く元通りの生活を送って欲しい』と考えてしまいがちですが、焦らずに出来るだけ気長に待つ心構えが大切です。『大丈夫?』、『疲れてない?』とあからさまに声をかけると、患者さん本人は焦ってしまったり、罪悪感を感じて抑うつ的になったりしてしまいます。『今日は楽しかった?』、『お疲れ様』といった、日常的な声かけになるよう工夫をしてあげてください。

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