治療について

抗精神病薬はどんなお薬?

 2018/4/15 

統合失調症の治療は、薬物治療が基本になります。統合失調症は、脳の神経伝達物質の機能異常によって生じることは明らかであるため、その機能異常を調節して、症状を抑えるために薬物療法が必要となります。

特に統合失調症では、脳内で大量のドパミンが放出され、ドパミンの刺激をたくさん受け取った神経細胞が活動しすぎの状態となり、幻覚や妄想、興奮などの精神症状が生じるため、脳内のドーパミン神経の活動を抑制する抗精神病薬が治療に用いられます。

抗精神病薬には、定型抗精神病薬(従来型)、非定型抗精神病薬(新規)という2つのグループがあります。

(1)定型抗精神病薬(FGA: First generation Antipsychotics)

古くから使用されてきた第一世代の抗精神病薬で、主に幻覚・妄想や考えをまとめられないといった陽性症状に効果があります。逆に、陰性症状や認知機能障害に対する効果はあまり認められません。非定型抗精神病薬に比べ、錐体外路症状(EPS)などの副作用が出やすい傾向があります。

【薬剤】(カッコ内は商品名)

  • クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)
  • ハロペリドール(セレネース、リントン)
  • スルピリド(ドグマチール、ミラドール、アビリット)
  • トリフルオペラジン
  • プロペリシアジン(ニューレプチル)
  • ペルフェナジン(ピーゼットシー)
  • フルフェナジン(フルデカシン、フルメジン)
  • レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)

(2)非定型抗精神病薬(SGA: Second Generation Antipsychotics)

陽性症状に対してFGAと同等の効果があり、副作用の錐体外路症状(手が震える、体の動きが硬くなるなど)や、高プロラクチン血症が少なく、陰性症状(感情の平板化、思考の貧困、意欲の欠如)に対する効果は定型抗精神病薬よりも高いと言われています。また、認知機能障害への効果も期待できます。

【薬剤】(カッコ内は商品名)

  • アリピプラゾール(エビリファイ)
  • アセナピン(シクレスト)
  • オランザピン(ジプレキサ)
  • リスペリドン(リスパダール)
  • パリペリドン(インヴェガ)
  • ブロナンセリン(ロナセン)
  • クエチアピン(セロクエル)
  • ペロスピロン(ルーラン)
  • ジプラシドン
  • ゾテピン(ロドピン)
  • クロザピン(クロザリル)

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【定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬】

世界精神医学界は、51の定型抗精神病薬(FGA)と、11の非定型抗精神病薬(SGA)を比較し、錐体外路症状(EPS)を最小限に抑え、抗コリン薬の使用が避けられたならば、SGAがFGAよりより有用であることを指示する説得力のあるエビデンスはないと結論づけています。(Tandon R et al. World Psychiatric Association Pharmacopsychiatry Section statement on comparative effectiveness of antipsychotics in the treatment of schizophrenia)

SGAはEPSが少ないという利点があるかもしれませんが、代謝系副作用(糖尿病のリスク、脂質異常症のリスク)を考慮すると、この利点は相殺されてしまいます。

臨床の現場では、陰性症状や認知機能に対しても改善効果があるSGAが、第一選択として使用されることが多いです。

【抗精神病薬を用いた薬剤治療の原則】

統合失調症の薬物療法では、抗精神病薬を何種類も併用するのではなく、なるべく単剤(1種類の抗精神病薬)で使用し、量についても、効果が得られて副作用がなるべく少ない用量に調整することが望ましいとされています。また、併用薬(抗不安薬や眠剤など)についても、なるべく使用しないか、使用する際でも少ない種類・量で、短期間の使用にとどめた方が良いとされています。医師としっかり相談して、治療方針を決めて下さい。

抗精神病薬には、同じ成分の薬でも異なった剤形があります。近年、1日1回の内服で良い薬や、2〜4週間効果が持続する注射剤もありますので、患者さんの状態、生活状況、使いやすさや好みに合わせた選択をすることが可能です。

【抗精神病薬の種類】

抗精神病薬には、携帯に便利な錠剤、量を細かく設定できる細粒剤、即効性も期待できる液剤などの経口剤をはじめ、静脈注射や筋肉注射などの注射剤もあります。

経口剤では、成分がゆっくりと継続して出てくる錠剤や、口の中で水なしで溶ける錠剤、液剤を携帯しやすくした分包品などの種類もあります。

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筋肉注射には、薬の成分がゆっくりと時間をかけて体内に取り込まれ、2〜4週間効果が持続する『持効性注射剤(LAIまたはデポ剤)』と呼ばれるものがあります。

どのお薬も全ての種類があるわけではありませんが、主治医によく相談し、病気の状況や自身の生活スタイル、飲みやすさなどから自分に合った剤形を選択して、飲み忘れをなくすことが重要です。

【世界のガイドライン】

(1)NICE(National Institute for Health and Care Excellence):イギリスの国立医療技術評価機構

① 患者の年齢や未治療期間の長さに関わらず、最初のエピソードあるいは精神病症状の兆候があらわれたすべての人々に精神科による早期介入が利用できるようにするべきである。

② 心的外傷後ストレス障害(PTSD)あるいはトラウマによる他の反応で無いかどうかを評価すること。

③ 薬剤選択には治療者と患者が共同で参加すべきである。患者の同意が取れる場合、介護者の意見も聞くこと。情報を提供し、それぞれの薬剤の利益と下記の副作用について議論すること。

④ 薬剤変更のための短期間の併用を除き、最初の治療で抗精神病薬を併用することは望ましくない。

引用:National Institute for Health and Clinical Excellence, Psychosis and schizophrenia in adults: treatment and management Clinical guidelines CG178 Issued: February 2014( http://guidance.nice.org.uk/CG178)より作製

(2)米国エキスパート・コンセンサス(A Roadmap 2007年)

体重、血清脂質、空腹時血糖が正常で、精神病症状の急性エピソードを経験した健康な若年男性の治療において、抗精神病薬の第一選択は、リスペリドン、アリピプラゾールが好ましいという結果となった。

(3)モーズレイ精神科処方ガイドライン

統合失調症の初発例であれば、

① 患者や介助者が合意して選択した抗精神病薬を投与。もし不可能ならば第二世代抗精神病薬(SGA)を開始。

② 必要に応じて最小有効量まで増量する。

③ 反応と忍容性に応じて用量を補正する。

④ 2〜3週間かけて評価する。

効果があれば効果的と判断された量で継続する。

効果がなければ、変薬し、上記過程を繰り返す。SGAかFGAを考慮。それでも効果がなければクロザピンを検討する。

【薬物が忍容されない、服薬遵守が不良であった場合について】

  • 忍容性の低下と服薬遵守不良が関連する場合には、医師は患者と相談し変薬(お薬の変更)する。
  • 他の理由の場合には、デポ剤(LAI)や服薬遵守指導、服薬遵守システムを考慮する。

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