精神科医の声

統合失調症体験談

 2018/4/15 

1.大学で監視されているという被害妄想があったA君(22歳男性)

大学4年生の就職活動中、突然、人の視線が気になるようになりました。

そういえば就活で忙しくて、何日も眠れない日が続いていました。次第に、誰かから見られている感覚が強くなってきました。自分の携帯電話から電波が出ていて、誰かに自分の情報を漏らしているような気がして…。

様子がおかしくなったことに気がついた友人が、『病院に行こう』と言ってくれたけど、『友人は私の就職活動を邪魔している』と思ってしまい、攻撃的な態度をとってしまいました。あの時は本当によくわからないくらい、本気で怒ってしまって…。その友人が大学のカウンセラーに相談して、大学のカウンセラーと一緒に精神科を受診しました。

医師から、統合失調症の可能性があることを告げられ、抗精神病薬(エビリファイ)が処方されました。今後、就職活動や、就職してからの生活変化など、環境の変化でストレスが増えることを考えると、お薬は絶対に続けた方が良いと言われました。しばらくエビリファイの内服治療をして、大学は約2ヶ月間お休みしました。薬を飲み始めて2週間くらいすると、症状は落ち着いて、1ヶ月もすると、元のように気にならないほどに回復しました。そして大学に復帰して、就活を無事に乗り越えることが出来ました。

就職して社会人生活が始まると、飲み会や残業などで生活が不規則になりがちになり、お薬を飲み忘れたりすることがありました。そんな時に、主治医の先生が提案してくれた、注射による治療(LAI:持効性注射剤)を試しにやってみようと思いました。今も月に1回、注射をしています。お薬を口から飲むことがなくなったので、今はストレスのない生活を送っています。

【医師のコメント】

統合失調症の確定診断は、一定期間が必要ですが、治療については、早期介入し抗精神病薬による治療を開始します。統合失調症は慢性の疾患なので、糖尿病や高血圧と一緒で再発防止のために継続的な服薬が必要です。生活が不規則になったり、忙しい日常を送る人にはLAI(持効性注射剤)は非常に良い選択肢になると思います。

2.息子(C君24歳男性)が統合失調症を発症

思い出すと、息子は大学受験に失敗した頃から、勉強について何度も話をするようになり、『アパートの下の住人が監視している』と言うようになりました。

その頃は、おかしなことを言っているな、と思う程度でした。

当時は、統合失調症という病気自体知らなかったので、この言動が病気の症状だとは気づきませんでした。

はじめは、『そんなことないでしょ』と返答していたのですが、次第に『帰ってくるのを待ち伏せされている』と言ったり、一緒に車で外出をすると『後ろの車がずっとつけてきている』と言うようになりました。冗談を言っている様子はなく、怯えたような表情で訴えてきました。次第に部屋から出ることが少なくなり、カーテンも閉め切って生活するようになりました。何かの病気かもしれないと感じて、インターネットで調べると『統合失調症』という病名が出てきました。そこで初めて、精神科の受診が必要だと知りました。

息子には病院へ行くよう話しましたが、『自分は病気じゃない』『これは本当に起こっているんだ』と、なかなか受診に連れて行けませんでした。口調も攻撃的になり、恐怖に思うこともありました。このとき、どのように連れて行ったら良いのか分からず、途方に暮れたのを覚えてます。

しかし、息子もよほどしんどかったのか、家族の中で一番信頼している兄の説得で、なんとか受診することができました。

医師から病名を告げられたときは、怖いような、ほっとしたような気持ちでした。今後、どのような未来が待っているのか心配が大きい一方、今までの行動が病気の症状だと分かって、少し楽になりました。受診した病院では、医師が病気について丁寧に説明してくれたり、家族向けの勉強会もあり、病気や接し方について学ぶことができました。

【医師のコメント】

統合失調症の特徴として、病識の欠如があります。患者さん本人は自分の妄想や幻聴が現実と区別がつかないことが多々あります。ですので家族が心配して病院に連れて行こうとしても、『自分は大丈夫』と言われて病院を受診することを拒否されることがしばしばあります。臨床の場でも、『どうやって病院に連れて行ったら良いかわからない』と御家族から相談されることがあります。近くの医療機関(精神科)に電話などで相談したり、地域の福祉課に相談したりすると良いです。また、暴力を振るったり自傷行為を行った場合はすぐに警察に連絡しましょう。警察に連絡した際に、具体的な精神症状があることを伝えると警察官が医療機関に相談し、受診に協力してくれます。

3.専門学校生Dさん(10代女性)

専門学生Dさんは、入学当初は明るい子でした。特段、社交的というわけではありませんが、昼食時や教室の移動の時は友人と一緒に行動したり、交友関係で困っているという様子はありませんでした。

しかし、実習が始まった頃から『眠れない』という相談を受けるようになりました。元々まじめで一生懸命頑張る子だったので、色んなことを完璧にしようとしていました。適宜相談に乗りながら、実習は終了することができました。

しかし、実習が終わっても、眠れない日が続いていたようでした。寝つきが悪く、2〜3時間しか寝てなかったり、一晩中起きてたこともあったそうです。

ある日、『耳鳴りがする』と、何気なく話していました。そのときは気にも留めませんでした。授業には出席していましたし、課題も提出できていました。ただ、少し落ち着きがない印象がありました。(後から聞いた話では『右へ行け』『死ね』等と、幻聴で言われていたそうです。)

数日後、授業中、独り言を言うようになりました。注意すると謝罪をするのですが、どこか落ち着かない様子でした。その後も同様のことが続き、突然笑い出したり、場にそぐわない表情をしたりするようになりました。その度に、授業を中断せざるを得ない状況になったため、ご両親と連絡を取り、精神科を受診する運びとなりました。

通院し始めた当初は、学校での受け入れが困難と、学校側に言われました。合わせて、学費の支払いが困難である場合は、退学という選択となることを伝えられました。両親は非常に悩みました。どうして良いのかわからず、病気のこと、特に今後の状態も全くわからなかったので、主治医やソーシャルワーカーの人とも相談しました。その結果、休学の手続きを取り、半年間療養することにしました。

半年後、Dさんは落ち着いて話ができる状態で、主治医と相談した結果、復学しました。学校側もご両親を通じて、注意しておくこと等を伺いながら対応していきました。その後は通院をしながら通学し、無事卒業しました。

【医師のコメント】

統合失調症を発症すると、精神症状が著しく、場合によってはそれまでのキャリア(仕事や学歴)が台無しになってしまう可能性があります。大切なのは、病院を受診すること、そして決断を急がないことです。統合失調症は発症時、妄想や幻聴など精神症状を示し、行動化することで人間関係や社会生活に著しい影響を及ぼすことが、多々あります。統合失調症の精神症状は、適切な薬物療法を行うことで(特に急性発症例、初発例では)劇的に改善することが、しばしばあります。そのため、発症時の精神症状から判断するのではなく、まずは治療に専念することが大切です。

そして治療中は、結論の先送りをすることが大切です。治療中は大胆な決断(退学や退職など)はしないようにしてください。治療中に結論を出したものの、治療が終わる頃には精神状態も改善して、復帰しようと思っても復帰できない状態になってしまっていると、後悔が残ってしまいます。

大胆な決断をする時は、本人、家族、主治医、PSW(ソーシャルワーカー)、学校または職場の関係者などとカンファレンスを行うなど、慎重に対応していく必要があります。

4.働けるようになったEさん(30歳代男性)

高校中退後、仕事をするために県外へ行きました。仕事は1〜2年ごとに変わっていました。人間関係でつまずくことが多かったように思います。

4カ所目の職場に勤務していた時のことです。当時は職場の寮に住んでいたのですが、ある日仕事から帰った時、自室に置いていた物がなくなっていました。その頃から『同僚に物を取られる』と思うようになり、家を空けるたびに、誰かが部屋に入っているんじゃないかと思ったり、同僚のことが信じられなくなりました。そのため、同僚と揉めることが多くなり、仕事を続けることができなくなり、実家に帰りました。

実家では、家の中に誰かがいて見張られている感じがして怖くなり、お祓いに何度か行きました。その間も仕事をしていましたが、数週間から数ヶ月と、長続きしませんでした。

両親の勧めもあり、精神科を受診したこともありましたが、自分が病気とは思っていなかったため、受診に1〜2回行っては中断し、両親に言われたら、以前とは違う病院に1〜2回行っては辞めるということを繰り返していました。受診の度に診断名は変わり、妄想性障害と言われたり、適応障害と言われたりしました。

周囲のことが気になり、仕事もできず、自分自身、疲弊してきて初めて継続して通院することに決めました。そのときは、今のしんどい状況を、どうにかしてほしいという気持ちでした。継続して通院し、最終的に統合失調症と診断されました。

そして、抗精神病薬(リスパダール)が処方されました。薬を飲むことで夜も眠れるようになり、焦燥感も軽減し、とても楽になりました。

通院してからも、仕事をしたいという気持ちは変わらずありましたが、主治医の先生からは『焦らずまずは体調を整えてから』と言われました。仕事を始める時期については、先生と自分の体調と相談しながら決めました。働き始めるときは少し不安もありましたが、通院を続けながら今も働けています。

【医師のコメント】

後医は名医という言葉があります。統合失調症は、不眠や強い不安感を始め、妄想や幻聴、そして幻視など、多種多様な症状が現れます。ですので、最初は統合失調症と診断されず、不眠症や不安神経症、妄想性障害など異なった診断をされることが、しばしばあります。強迫性障害と診断されていて、途中で症状がひどくなり、統合失調症と診断名が変わることも、しばしばあります。後から見てみたら、統合失調症の前駆症状だったということが多々あります。大切なことは、その一連の精神症状をきちんと評価、診断してもらうためにも、定期的な受診を継続することです。

5.友人Fさん

Fさんとは高校からの付き合いでした。Fさんは、自分から悩みをあまり話すタイプではありませんでした。大学は違う場所に進学し、それ以降は会う回数が減りましたが、連絡は取り続けていました。働き始めてからは、仕事のストレスからなのか『寝た気がしない』と、不眠症でクリニックに通院していました。寝れない日は、病院で処方された薬を飲んで眠っていたそうです。

その後、Fさんは結婚したのですが、2年ほどで離婚しました。結婚していた時も不眠は続き、お金のやりくりに苦慮していたようでした。離婚をした詳細は私も分からないのですが、離婚前後から、いつもと少し違う様子でした。電話しても口数が少なく、会いにいってもほとんど笑うことはありませんでした。離婚という決断をしたので、仕方ないことだと思いました。その時は、『いずれは立ち直ってくれたら良いな』と思っていました。

その後も連絡を取っていましたが、離婚したことで色んな不安があるようでした。定期的に連絡をしていたのですが、2ヶ月くらい経った頃から連絡が返ってこなくなったため、心配で部屋を訪ねました。すると、掃除など家事がほとんど出来ていない状態でした。2日間ほど一緒にいたのですが、夜は寝ずに一カ所でずっと座っているし、食事も十分とれていませんでした。

また、話しかけてもしゃべれないような印象で、うなづくか、首を横にふるかの二択の返答で、話したとしても返答までに時間がかかり、声が震えていました。このまま独り暮らしを続けるのは不安だと思い、家族に連絡しました。どこのクリニックにかかっているか分からなかったため、他の病院を受診するよう手配してもらいました。

受診時には一緒に診察室に入り、最近の様子を伝えました。その後、入院となりました。入院してしばらくしてから、本人に連絡を取ると、話もできる状態で安心しました。入院時のことは覚えていて、『ありがとう』と言ってくれました。

治療をすると以前のFさんに戻ってきて、3ヶ月後には無事退院していました。

【医師からのコメント】

統合失調症を発症すると、病識(自分が病気であると理解すること)がなく、生活は崩壊してしまいます。離婚や借金問題など、ストレスがかかると病状は悪化するのですが、このお話のように、ストレスで気分が落ち込んでいるだけなのか、統合失調症など精神病を発症しているのか、判断が難しいことがあります。

そんな時は、家族や友人などに相談して、出来るだけ早期に精神科(または心療内科)を受診するようにしてください。

6.恋人Gさん(20代女性)

僕は、付き合っている人が病気になりました。何がきっかけか分からないのですが、家族とうまくいってなくて、悩んでいる様子がありました。

彼女の性格が変わったと思い始めたのは、LINEの文章がいつもと違った時です。絵文字が多かったり、一日に何十通も届くようになりました。SNSにも頻繁に投稿するようになりました。助けてほしい、という内容のものが多かったです。

次第に、家族や自分に対して攻撃的になりました。言葉遣いも荒くなりました。怒りだすとどうしようもない状態で、泣きながら怒ることもあり、すごく不安定でした。

一方で、他人に対してはいつも通りの対応でした。そのため、性格や考え方が変わったのだと思いました。『こんなことを言われた。あんなことをされた』と、僕や家族の言葉や行動を、被害的に受け取るようになりました。夜中に外出することも増えました。

そのうち、『目に何かが入っている。何か埋め込まれている』と言うようになりました。そんなことないと伝えても、『絶対何か埋め込まれている』とかたくなに譲りませんでした。しきりに目のことを気にして、ずっと、そのことを言うようになりました。目の病気かもしれないと思い、眼科を受診しました。すると、眼科の先生に精神科の受診を勧められました。

精神科がどのような所か分からず、不安もありながら一緒に精神科の受診に行きました。何度か通った後、精神科の医師に病名を確認すると『統合失調症』と言われました。

僕は、病気について聞いたことがなかったため、本で原因や症状などを勉強しました。わからないことは、主治医の先生に質問したり、相談にのってもらいました。特に今後、彼女との結婚を考える上で『統合失調症』という病気は、すごく不安でした。ずっとこの状態が続いたらどうしよう、再発したらどうしよう、子供に遺伝したらどうしようと、不安だらけでした。主治医の先生は時間を作ってくれて、相談に乗ってくれました。病気のこと、一緒に生活していくこと、遺伝のこと、彼女本人より、僕の方が主治医の先生と話した時間が長いかもしれません(笑)。

彼女は無事症状も落ち着き、退院しました。そして僕は、彼女と一緒に人生を歩んでいくことを決めました。正確には、僕と彼女と主治医の先生の3人なんですけど(笑)。

主治医のS先生、ありがとうございました。これからも末永く、宜しくお願いします。

【医師からのコメント】

統合失調症は、『完治』ではなく『寛解』という言葉を用います。

お薬をきちんと内服(または注射)しないことで、再発する可能性があるからです。規則正しい治療を行う事が出来れば、再発の確率は有意に低くなります。

そして何より、統合失調症に限らず、『早期発見・早期治療』が非常に重要です。

定期的に主治医に受診することで、精神症状・精神状態の変化に気づいてもらいましょう。また、悩みや困っていることについて聞いてもらうことも、統合失調症と向き合っていくためには大切です。

PAGE
TOPへ